忙しい人のための3行まとめ
- 石垣島のスーパー帰りに、「そば300円」の看板に惹かれて創業90年の「栄福食堂(通称:トニーそば)」へ
- 店主のおっちゃんは、人生経験が濃くて自由すぎる人。八重そばとトニーそばは、名前が違うだけで味は同じ
- 自家栽培の香辛料「ピパーチ」が絶品。後日再訪すると、おっちゃんは僕のことを忘れていた
何を食べるかよりも、誰と食べるか。
どこに行くかよりも、誰と行くか。
何をするかよりも、誰とするか。
旅の目的は星空。石垣島ではお腹が減る
今回は一人旅。
だからといって、お目当ての料理があるわけでもない。
今回の旅の目的は、西表での星空鑑賞。
食や観光よりも、星空。
お金はかけず、滞在先の民宿(夕食付き)とホテル(無料朝食バイキング)で食事は事足りる。
ただ、中継地点の石垣島ではお腹が減る。
節約しつつ、当日の筋トレ分の栄養も補うつもりで、地元のスーパーへ。
納豆3パック、トマトジュース、半熟卵。
「そば 300円」の看板と、気配を消した店主
そんな買い物をするために歩いていると、
「そば 300円」
という看板と、ただならぬ存在感に惹かれ、お店の前にふらっと立ち寄った。


300円なら、3杯頼めばお腹いっぱいになれるんじゃ?
カード決済はいけるのかな?
でも、スーパーで買い物もしたいしな。
そんなことが頭をよぎった瞬間。
「にいちゃん、どっから来たん??」
声の方に体を向けると、しまった。店主だ。
警戒心が強く、テリトリー圏内の存在は常に察知できる僕に気づかれないくらいの「絶」(※)の使い手。
※「絶」は漫画『HUNTER×HUNTER』に登場する念の技術。オーラを消して、自分の気配を消すことができる。
「大阪か。貝塚市知ってる? 貝塚」
「東京にもおったんか。山谷とかしっとるよ」
「海外はどっかいっとったんか?」
しまった。
けっこー喋りかけてくる。
そして、なかなかスーパーに向かわせてくれる隙がない。
「俺はさ、やきとん焼いとったよ」
「ブエノスアイレスもいっとったよ」
(世界観、急にぶっ飛ぶなぁ)
「アフリカの希望峰も。アメリカもいったしな」
(あれ? ひょっとして、ご年配ということもあって、ちょっと始まってるタイプか?)
「椎名誠さんって知ってる? あの人がおっちゃんのこと本にして書いたんよ」

初対面で情報量の共有が多すぎる。
が、僕の受け答えもしっかり拾ってくれる。
ちゃんとコミュニケーションがとれる。
たまに街で遭遇する「変な人」の部類でもなさそうだ。
こういった「敷かれたレールを走っていない人」との会話は、共振できる類なので、しばらくお話しさせていただくことに。
創業90年のお店で、ふらっと流れ着いた話
どうやら、お店は創業90年という歴史あるお店。
2代目として引き継いでいるそう。
感謝状もいっぱい飾ってある。
海外版の旅行ガイド(たぶん『Lonely Planet』)にも、おっちゃんのことが掲載されているらしい。

「マグロ漁船にも乗っててな。それで海外いろんなとこ行ってたんだよ」
もともとは、当時の経済成長の流れで、名古屋とかの京浜地帯で工場勤務をしていたそう。
でも、仕事が覚えられなくて、流れ着いた先がマグロ漁船。
「色黒だからやってみるか?」
そんな誘い文句に、二つ返事で決断したという。
このフッ軽さも、僕に近いものを感じる。
ちらりとお店の中に目をやると、閑古鳥が鳴いている。

創業90年で、感謝状もいっぱいあって、そばは安い。
なのに、誰もいない。
もうこれは、判断材料が僕の価値観の一つである
「何をするよりも誰とするか」
しかない。
このおっちゃんが好きかどうか。
このおっちゃんのお店で、このおっちゃんが作ったそばを食べたいかどうか。
答えは必然だ。
食べ……る。
こういう時のために予備で携帯している現金、一万円札1枚しか持っていない。
ちょうどお札でお釣りをいただける注文ができるか確認しつつ、スーパーにも用事があるので、ひとまずお店を後にした。
大好きなローカル感満載のスーパー

なんだよー。
日本なのに、見たことない飲み物あるよ。

「ゲンキ クール」結局なんなのかわからんかったけど、多分甘いんだろうなー。
スーパーの店員さんに、栄福食堂のおっちゃんのお店で食べてくるんだけど、どんな人か聞いてみた。
店主のおっちゃんは、ちょっと変わってるとのこと。
(地元でも周知の事実?)
歴史あるお店で、おいしいかどうかは意見が分かれるけど、せっかくのご縁だから大切にしてもいいかもね、とのこと。
なにやら言葉に含みがありそうだけど。
店員さんも、僕が好きなワード「ご縁」を散りばめて、心をくすぐってくる。
おっちゃんのお店に、踵を返すのであった。
トニーそばと八重そば、まさかの同じ味
あれ? おっちゃんいない。
「こんばんはー」
「こんばんはー」
厨房にもいない。
生活圏との境目の暖簾越しに、
「こんばんはー」
「あいよー」
出てきた。おっちゃんだ。
「戻ってきました! そばください」
八重そばとトニーそばがある。
それぞれ大が700円、小が300円。

お釣りは絶対に紙幣のみでもらいたいのでどっちかを大、どっちかを小で頼んで1,000円で、お釣りが9,000円。
八重そば大とトニーそば小、1つずつにした。
おっちゃん曰く、
「名前違うけど、どっちも味同じだよ」
とのこと。
え?
「自分の名前つけた方が売れると思ってよ」
さすがだ。
その発想はなかった。
常識の概念にとらわれないというか。
当たり前すぎて気づけなかったというか。
忘れかけていた何かを取り戻させてくれるような、フリーダムな世界観。笑
待ってました。トニーそば!
それでは、さっそくいただきます!!


ずるずるずる……
癖のない味。
あっさりとしていて、独特の麺。
というか、
ぬっるっ……。
仕込みに時間がかかっていたから、煮込んでいるのかなって思ってたけど、スープがめちゃくちゃぬるい。笑
(後から知りましたが、八重そばはもともとスープがぬるいそうです)
麺もなんかコシがない。笑
そして、
事前の説明通り。
八重そばとトニーそばは、まったく同じ味だwwww
でも、これはこれでおいしい。
作ってくれて、提供してくれているのがトニーのおっちゃん。
食べる場所が、おっちゃんのお店。
そして、この空間にはおっちゃんと僕の二人きり。
この瞬間が、かけがえのない最高の「今」なのである。
この経験のために、僕は旅をしていると言っても過言ではない。
(店内で偶然流れたラジオは、藤井風さんの楽曲特集。
流れてきた「何なんw」、「帰ろう」を聴きながら、今回の旅もふけーわーって、感慨深く浸りました)
おっちゃん特製の香辛料「ピパーチ」
突然、おっちゃんから、
「これ使ってみるか?」
と、何やらコショーのような小瓶を机に置かれる。

おっちゃんが栽培している植物「ピパーチ」から作った、特製の香辛料とのこと。
説明書きのパウチも見せてもらうと、
これはおもしろい。見たことがない。

振りかけてみると、
うまい!!
普段、塩と香辛料だけで調理している僕にとって、これは魅力的すぎる。
お土産として購入。親友にも。
畑も見せてくれた。
「つぎ、いつ来れんの?」
「来れるなら、来週、西表からの帰りに寄れたら……」
「明るい時に畑見せてあげるから、また来なさい」
一つ、今回の旅にアポができました。
SNSやネットで栄福食堂のことを載せていいからね、とのこと。
載せるに決まってる。
最初に「絶」でアプローチをかけられた、その瞬間から、僕はこの時を待っていたのだ。。
という感じで、ブログ記事として掲載させてもらいましたよ。おっちゃん。
追伸:リベンジの結末
「西表からの帰りに寄れたら、明るい時に畑見せてあげるから、またきなさい」
西表からの帰りのフェリーの予定が変わって時間ができたので、行ってみたら、おっちゃんは僕のことを忘れてました。
「女の子だったらおぼえてんだけどよー。(にたにた)」
「チッ……」
ブログのオチを作ってくれて、ありがとうございました。
石垣に行ったら、またリベンジしたいと思います。
人物紹介

おっちゃん
「栄福食堂(通称:トニーそば)」の店主、トニーこと、おっちゃんこと、通事國浩さん。
東京の議員さん(おっちゃんも好きな「若い女性」)も、お店まで駆けつけるくらい、何かの方面で影響力があるようで。
ツーショット写真が飾ってありました。

